Matsubara工房という屋号で特注品対応をはじめました。でも職業欄は農業ですので農業ネタもあります。
大口径アポクロマート
2015-07-29 Wed 23:30
知人から年の初めにユニークな依頼がありました。

以前から中古で入手したスカイウォッチャーのD15cmF8アクロマート鏡筒を持っていたそうです。
昨年末に国際光器のクリスマスセールにてAPM ZTA 152 鏡筒用の2枚玉 152mm/F7.9 EDアポクロマートのセル付が運よく購入出来たそうです。

同一口径で同じ焦点距離なので何とか対物レンズを載せ替えられるだろうと思い購入したそうですが鏡筒のレンズセルの接続が簡単には行きそうになく送るので考えて欲しいとの事でした。

其々の寸法採りをして光学的・機械的に合うアダプターを新規設計する必要があるので時間を貰えるのなら引き受け旨を伝えてはや半年が経過してしまいました。実測データにてCAD図面を興しアダプターとフードの新作と接眼等を支給品に置換する事になりました。

15cmF8鏡筒 CAD図面です。主光軸のみ記しています。

スカイウォッチャーの鏡筒は思った以上に洗練されていました(量産品として低コストで作るという意味においてですが)レンズセルとフードはアルミダイキャストの一体物で接眼筒もラックアンドピニオン式で必要充分の機能を持っていてファインダー台座も一体型で持ている物でした。

対物レンズセルと鏡筒を接続するアダプタはA2017TE-T4(ジュラルミン)の厚肉パイプΦ170x20tを使って旋盤で削り出す事にしました。鏡筒側:M143/P1.5 雌ネジ 、 レンズセル側:M156/P1.0 雄ネジ を設ける必要があるので旋盤加工を選びました。
材質は切削性と入手性で選びました。

①アルミパイプ アルミパイプですサイズ比較にPPOテープを置いています。

5吋旋盤で外径170、内径130のワークをチャックするのは通常の方法では難しく加工手順もチャック出来るかを熟慮して決めました。この状態では内径のφ130を外爪でチャックしています。

②端面と内径の整形 加工時順となる内径&端面仕上げ

 ③ワーク反転 ワークを反転させてチャック

④ワーク端面切削 ⑤ワーク内面切削 ⑥鏡筒側ネジ下加工
鏡筒側の端面仕上げ、内径加工、ネジ下穴加工をしネジ加工を済ませます。

⑦外径加工 ⑧外径テーパ加工
外径加工と鏡筒との接続のイメージを醸し出す為7°のテーパーをつける事にしました。

⑨芯出し治具製作 芯出し治具
ワークを反転させるとどうしても芯が出ないので芯出し治具を製作しました。黒POM製でグリース潤滑で回転させます。

⑩レンズ側ネジ下加工レンズセル側の外径加工

⑪レンズ側セル取付ネジきり レンズセル側のねじ切り加工

⑫レンズ仮装着でネジ確認 ネジの嵌め合いを現品で確認

⑬レンズ側内径座繰り レンズセル側の内径座繰り

⑭アルミ切削屑の山 気が付けば切削屑の山です。黄色い袋の中にも入っています。

⑮アダプタ_レンズ側 アダプター完成品レンズセル側です。

⑯アダプタ鏡筒側 アダプター鏡筒側です。

⑰新対物レンズ仮組 アルマイト前の仮組です。

⑱対物レンズ組付け アダプター黒アルマイト後
表面処理は内側はアルマイト用艶消し黒色塗装の上の艶消し性の良い黒板塗料艶消し黒を吹いています。外側はアルマイト用 艶消し黒の上にウレタンクリアーを吹いています。


対物レンズが無事に鏡筒に収まりましたので次はフードです。
対物レンズの保護キャップがアルミの挽物の逸品が付いていたので流用すべくフードの開口径はレンズキャップより少し大きなものとし先端絞りとナイフエッジにしています。材質はガラス繊維とポリエステル樹脂によるGFRPで湿式で作りました。

①フードガラスクロス巻 基本となる単筒の製作です
コアはφ200のボイド管です。ボイド管外側にクラフトテープ(=剥離紙)を貼りガラスマット:1層、ガラスクロス:3層を黒の着色剤で染めたポリエステル樹脂で積層します。

②フード表面研削 表面の整形
フードの表面を平滑化するためランダムアクセスサンダーで荒削りします。先端絞りの整形や鏡筒との異口径を合わせえる部分に厚さ10mmのハニカムガラスクロス等を追加積層し形状を確定します。その後全体の小さな凹凸を消すため中目のポリエステルパテを全面に薄くあて#240→#400と水研ぎペーパーで研ぎます。さらにプラサフを塗布→水研ぎを数回繰り返しプラサフ→ホワイトプラサフ→白色塗装→ウレタンクリアーを吹きました。内側の艶消し処理をしてフードの完成です。

③フード 保護シート取付 フード後端の保護シート
実際に運用してみたところフード後端と鏡筒バンドが移動時などに当たり頑強なウレタンクリアでも傷がつきました。そこで、同色のポリプロピレンシートをドーナツ形に切り抜きフード後端に保護シートとして貼り付けました。難接着材も接着できるScotch PREMIER GOLDの透明を使って接着しました。フードの総重量はちょうど1kgほどです。

ドローチューブ引出し量 焦点引出し量確認
接眼部をウイリアムオプティクス製に置換したので焦点位置の確認の光軸、内外像チェックなどをしました。こと座のベガで谷オルソ5mmでX240で確認しましたが内外像も綺麗で奇跡的に光軸は合っておりアスなども認められず綺麗なディフラクションリングを見る事が出来ました。

④ファインダー取付台座 ⑤ビクセン台座取付 ファインダー台座
接眼部をウイリアムオプティクス製に置換したのでファインダー台座を新たに設けなければならなくなりました。ビクセンのファインダー台座を使えるようにとの知人からの要望があったので最初は鏡筒に2個穴を開けておけば良いかなと考えていたのですが少し工夫をしてみようと気が変りビクセンファインダー台座用の台座を新たに作ってみました。

5mm厚のアルミ板を自作した3本ロールで鏡筒の曲率に合うように曲げフライ盤で外形とビクセン台座が収まる場所を削り出して作りました。鏡筒には中心から放射状に(=鏡筒表面に垂直)にM3タップを立てています。これにより鏡筒内部への飛び出しも少なく何より4箇所をサラネジで止めるので扱中にずれてしまう事もありません。

⑥ファインダー取り付け ファインダーを取付けてみました。
ファインダーは大好きなアストロ製正立ファインダーです。気が付けば3本集めてしまいました。類似の正立ファインダーが売られて持っていますが見え味は別物と感じています。一番の違いは微光性が類似品は消えてしまう事で手動で星雲を導入する時などに性能差を感じます。

鏡筒バランス バランス確認
フードを付けていないですがトップヘビーです。冷却CCDカメラを取付けると丁度良い感じになるのでは・・・


群馬天文台1 完成 完成形
JP赤道儀に搭載してみました。鏡筒バンドはビクセンのアリミゾ/アリガタで装着しています。

群馬天文台2 観望会
先週末にあった群馬天文台 夏祭りに前橋の天文ショップ ギガオプト様のお手伝いで参加してきました。土曜日の昼下がりに昼の金星を視ているところです。15cm鏡筒ではアルファベットの「C」の字の細い金星が綺麗に見えました。ファインダーでも見えると伝えたところ覗き込んでいます。

星祭りには目の肥えた方も来られるので問題点があれば気づかせてもらえるかなと思い持ち込んでみました。評価は良好で2枚玉EDですが色目は自然で2枚玉アクロマートで見られる青ハロは無縁でした。土星もシーイングはあまりよくありませんでしたが15cmの大口径ですのでカッシーニの空隙や本体の縞模様も安定して見えました。月も半月で面白いときですがセンチX20のX300でも破綻はなく素性の良いレンズです。ギガオプト製の非球面アイピース AS30との組み合わせでは月の海などが高コントラストで見られベストなカップリングと思いました。


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